家族の風景
 独り身の我が家の壁は薄い。休日には一日中寝ていることもしばしばなのだが、そんな日は隣一家の騒ぎ声で目を覚ますことがたまにある。「行け!よし!そこや!よっし!もうちょい!何しとんねん!あかん!違うって!うわぁぁ!うわぁぁ!」直接見たわけではないが、間違いなくテレビを囲んでの騒ぎである。もしポットを囲んで騒いでいるのなら、早々に引っ越したほうが良い。
 
 何度も経験するうちに隣一家が騒がしくなるテレビ番組は熟知してしまった。たいていはサッカーの代表戦。A代表の生中継ともなるとスタジアムと共に「オーレオーレ」が始まるので少々困る。「ナカァータ、ナカァータ!」とジーコ風に連呼されたときには、さすがに壁を蹴るに至ったのだが …。他には『PRIDE』『K-1』などの格闘技番組がたまに混じる。まぁこちらとしても、それらの番組には目がないもので、隣一家が騒ぎ出すと急いでテレビをつけ、騒ぎ声とシンクロする映像を探すことになる。おかげで何度か代表戦を見逃さずに済んだ。少しくらいは感謝をせねばなるまい。
 
 ある日「よっし!そこや!行けぇ!上手い!よっしゃぁ!うわぁ!入った!」と、毎度の大騒ぎが始まったので、慌ててテレビをつけた。 … おかしい。どのチャンネルでも代表戦などやっていない。なおも大騒ぎは続き、あれこれとチャンネルを変える。「上手い!よっしゃぁ!入った!ゴォーォォル!ゴォーォォル!」隣一家の興奮に合わせて、武田鉄矢と細川ふみえがエアーホッケーをしていた。
 
 たとえ武田鉄矢が自慢のハンガーを振り回わそうが、細川ふみえが自慢のオッパイを振り回わそうが、決して大騒ぎなどしない静かなる我が家族の風景を想いつつ、ひとりホンジャマカの応援にまわった夜のお話。
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by ajicoba | 2005-12-17 01:28 | エッセイ
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アジコバの考える毎日
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