カテゴリ:エッセイ( 58 )
ジェネレーション
       母上様お元気ですか? 
       夕べ杉の梢に明るく光る星一つ見つけました
       星は見つめます母上の様にとても優しく
       私は星に話します
       くじけませんよ男の子です
       淋しくなったら話しに来ますね
       いつかたぶん 
       それではまたお便りします母上様 
                         一休



       この手紙を普通に読むのが難しいか否か。
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by ajicoba | 2005-12-19 02:20 | エッセイ
家族の風景
 独り身の我が家の壁は薄い。休日には一日中寝ていることもしばしばなのだが、そんな日は隣一家の騒ぎ声で目を覚ますことがたまにある。「行け!よし!そこや!よっし!もうちょい!何しとんねん!あかん!違うって!うわぁぁ!うわぁぁ!」直接見たわけではないが、間違いなくテレビを囲んでの騒ぎである。もしポットを囲んで騒いでいるのなら、早々に引っ越したほうが良い。
 
 何度も経験するうちに隣一家が騒がしくなるテレビ番組は熟知してしまった。たいていはサッカーの代表戦。A代表の生中継ともなるとスタジアムと共に「オーレオーレ」が始まるので少々困る。「ナカァータ、ナカァータ!」とジーコ風に連呼されたときには、さすがに壁を蹴るに至ったのだが …。他には『PRIDE』『K-1』などの格闘技番組がたまに混じる。まぁこちらとしても、それらの番組には目がないもので、隣一家が騒ぎ出すと急いでテレビをつけ、騒ぎ声とシンクロする映像を探すことになる。おかげで何度か代表戦を見逃さずに済んだ。少しくらいは感謝をせねばなるまい。
 
 ある日「よっし!そこや!行けぇ!上手い!よっしゃぁ!うわぁ!入った!」と、毎度の大騒ぎが始まったので、慌ててテレビをつけた。 … おかしい。どのチャンネルでも代表戦などやっていない。なおも大騒ぎは続き、あれこれとチャンネルを変える。「上手い!よっしゃぁ!入った!ゴォーォォル!ゴォーォォル!」隣一家の興奮に合わせて、武田鉄矢と細川ふみえがエアーホッケーをしていた。
 
 たとえ武田鉄矢が自慢のハンガーを振り回わそうが、細川ふみえが自慢のオッパイを振り回わそうが、決して大騒ぎなどしない静かなる我が家族の風景を想いつつ、ひとりホンジャマカの応援にまわった夜のお話。
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by ajicoba | 2005-12-17 01:28 | エッセイ
万が一に備えよ
 職場からの帰り道、定食屋に立ち寄る。何てことはないごく普通の定食屋。豚の生姜焼き定食を注文し、『こち亀』を読みながら、美味しくいただいた。お腹一杯さぁ帰ろうと、伝票代わりの紙切れを手に取る。そこにはただ一言、こう書いてあった。
 
 『  ブ  タ  』    客が客ならば血を見ているところだ。
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by ajicoba | 2005-12-15 17:58 | エッセイ
地球人の味覚
 上司よりタイ土産をもらう。何かのインスタント食品なのだろうが、いかんせんタイ文字が読めない。ただパッケージを見てわかる。絶対に辛い、それだけはよくわかる。唐辛子 → 辛い → 炎 という図式は万国共通のようだ。唐辛子をモチーフにした目つきの悪いキャラクターが睨みをきかせ、そいつが火を噴いている。唐辛子野郎が火を噴くのだからよっぽどのことになっている。「俺は辛いぞ!」という目一杯のアピールだろう。辛いものは好きなほうだ、受けて立とうじゃないか。
 いや、ちょっと待てよ、この「辛いぞ!」というアピールは誰に向けられているものか?上司はこれをタイの小さなスーパーで購入したと言った。つまり、タイ風味が楽しめるだけのチャラケたお土産品ではない。ターゲットは生粋のタイ人ということだ。なるほど一応の英語表記はあるものの、全く意味が分からない。日本の商品でこのパッケージなら「辛いんだろうな、明日お尻痛いかもな」くらいで想像は事足りる。でもターゲットはタイ人だ。タイ人に向けて「俺は辛いぞ!気をつけろ!」と言っている。きっとお尻では済まない。
 
 英語で商品名が書いてあったので読んでみる。『ザブ』 お尻では済まないフォー!
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by ajicoba | 2005-12-14 22:53 | エッセイ
スポーツマンになる朝ぼらけ 最終話
 こうなると後はもろいものだ。導かれるようにTシャツに着替え、誘導されるように近所を走ってみる。当然、激しく疲れるが「靴が悪いな」などと、あらぬ方向へ考えが向く。次の日、スポーツ店へと赴きジョギングシューズを眺める。「どうせだったらすぐに止めてしまわないよう、いいのを買う」もう考えは修正のできない方向へ向いたようだ。しかも、その金額の計上は「タバコ止めたら月に幾ら節約できるから」で弾き出された。
【決心】侵略が完了した瞬間だった。

 タバコを止め、馬鹿っぽく走り、馬鹿っぽくプールで泳ぐ。日々健康である。
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by ajicoba | 2005-12-13 01:28 | エッセイ
スポーツマンになる朝ぼらけ 第三話
 侵略は止まることを知らない。いつもどおり近所のコンビニに缶コーヒーとパンとタバコを買いに向かった。例のスポーツマンの家の前を通る。何げなくベランダを見上げると…ジャージである。ジャージが干してある。ナイキなどではない。『CAMPION』…奴は本気だ。ジャージはいけない。スポーツマンを象徴するアイテム。侵略によりパブロフの犬化させられた僕に成す術は無い。その結果「ちょっとコンビニまでタバコを買いに…」の道中で、あろうことか「ちょっとコンビニまで走ってみようか」などと馬鹿な考えを起こしてしまうことになる。高校卒業以来、まともな運動などしていない身体、頭が「走れ」と命じたところで走れるわけがない。走り方を忘れた身体、息があがる。「…このままではいけない」。
【自省】侵略が最終段階に達した瞬間だった。
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by ajicoba | 2005-12-12 20:08 | エッセイ
スポーツマンになる朝ぼらけ 第二話
 文化系には頭脳こそが全てである。『不健康』『虚弱』『早死に』という大きなリスクを冒しながら、日々頭脳を鍛え上げ研ぎ澄ます。それこそが文化系のロッケンロール。元気ハツラツなロッケンロールなど存在しえない。市民マラソンを走りきる体力など無くとも、日々の筋トレで手に入れた筋力など無くとも、この世界は動かせる。先人のロッケンローラー達は見事にそれを証明して見せてくれた。そして、それこそが文明社会の先端を行くことであり文化系のイデオロギー、生きる理由である。体力や筋力の先に『明るい未来』があるなどと鼻から信じてはいない。しかし、スポーツマンの侵略を受け始めた僕はふと疑う「信じないようにしているだけじゃないのか?」。仕事中、スポーツジムのサイトを検索し「会員…高いな」などと言ってみたりする。
【懐疑】侵略は着実に進んでいる。
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by ajicoba | 2005-12-12 00:59 | エッセイ
スポーツマンになる朝ぼらけ 第一話
 スポーツカー、スポーツ刈り、スポーツ麻雀、スポーツブラなどなど、冠するだけであらゆる物をたちまち爽やかで小っ恥ずかしい存在にしてしまう言葉『スポーツ』。くわえタバコでパソコンの前に座り続ける文化系の僕などに冠すると、存在そのものが危ぶまれるほど恐ろしく毒な言葉である。とりわけ『スポーツマン』となると質が悪い。アスリートとは全くの別物であり『記録』ではなく『健康』こそを至上とする人々である。何より馬鹿っぽくていけない。しかも、スポーツマンは文化系を決め込む人間の心を恐ろしく巧妙な情報戦で侵略してくる。爽やかに、そして着実に。

 徹夜明けの早朝、燃えるゴミを出す僕の前を近所に住むスポーツマンが走り過ぎる。朝冷えの空気にシャカシャカとウィンドブレーカー、首には白いタオル、「おはようございまッス」まッス…もはや健康至上主義のプロパガンダである。「おはようござ…」送り返す声に乗せて目線を合わそうしたが、もうスポーツマンは後ろ姿。何も無かったように部屋へ戻りタバコに火を…と同時によぎる思い「禁煙しようかな」。結局いつもどおり火をつけたものの、徹夜仕事ハネのタバコという至福のひとときを100%で楽しむことができない。部屋の空間を埋めていく煙が恐ろしく醜悪な存在に思える。『不健康』『虚弱』『早死に』…クソッ何故こんなことを考えなくてはならないのか? 実に不愉快だ。ちょっとだけタバコを浅く吸うようにしてみたりする。
【意識】侵略が始まった瞬間だった。
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by ajicoba | 2005-12-11 07:57 | エッセイ



アジコバの考える毎日
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