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よくわかる帝王学
 大学生の頃、とうてい自分の甲斐性では行けないような、高級料理店でバイトをしていた。大御所俳優や、お歴々が忍んで立ち寄るような店である。その店によく顔を出す親子連れがいた。どこかの社長か開業医か何かだろう、ブランドスーツで身を固めたご主人に、いかにもセレビアンな奥さん、そして小学2・3年生の少年。サスペンダーに半ズボン、白いハイソックス、いわゆる『鉄人28号』の正太郎少年である。まぁ、普段からそんな格好をした少年なのだから、まずタダモノではない。少年はオーダーをするとき、一切メニューすら見なければ、注文を聞いているこコチラの顔さえも見ない。食べたいメニューは全て頭に入っている。バイト君など相手にはしない。そして、ずっとマンガを読んでいる。マンガから一度たりとも目線を外すことなく、一品何千円という料理を次々とオーダーした後「ここまで全部2個ずつね。わかった?」などと言う。完全に世の中を舐めきった態度にカチコ〜ンとなりながらも、まぁ、所詮は小学生、マンガに夢中なんて可愛いものだ。「フンッ、やっぱり、ただのガキンチョだね」なんて悦に入ったのが、後に見事に裏切られる。

 少年が読んでいたマンガ『サラリーマン金太郎』
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by ajicoba | 2006-01-27 00:49 | エッセイ
大盛り
 つい言ってしまう。「唐揚げ弁当、ゴハン大盛りで」「ラーメンセット、ゴハン大盛りで」「カルビ、ユッケと、え〜、あとゴハン大盛りで」。いつまでこの「ゴハン大盛りで」を言い続けるのか、いや、言っても許されるのか心配で仕方がない。

 『ゴハン大盛り』は『学生』にこそ似合うものだ。よく通った定食屋の女将さんも、こちらが学生と知れば勝手にゴハンを大盛りにしてくれた。「お腹を空かせた学生さんにお腹一杯食べて欲しい」そんな優しさと「米食わしとけばいい」そんな適当さが溢れていた。『学生』→『貧乏』→『空腹』→『ゴハン大盛り』 いくら時代が変わろうが、この図式の中『お腹を空かせた学生さん』は美しい。ノスタルジックな青春の象徴。お金は無いが夢がある。唯一『貧乏』が肯定される存在。だからこそ世間様も寛容で、温かい応援の手を惜しまないのだ。

 だが、これが『社会人』→『貧乏』→『空腹』→『ゴハン大盛り』となると、どうやら別の話になってくる。『お腹を空かせた社会人』ちょっとまずいんじゃなかろうか?そこには気の毒さが滲み出るばかりだ。『お腹を空かせたお父さん』『お腹を空かせた義理の父親』『お腹を空かせたお爺ちゃん』『米食わしとけばいい』この先『ゴハン大盛り』は家族・親類をも巻き込んで、どんどんまずい方向へ向かって行く。
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by ajicoba | 2006-01-25 00:50 | エッセイ
模範解答
 小学2年生の頃、日記に「今日は何もありませんでした」と書いて、担任にこっぴどく怒られた。「子供の毎日に、何も無い一日など存在してはならない」そんな怒りっぷりだった。当時の日記の内容と言えば「体育の時間に野良犬が運動場に入って来た」とか「A君が鼻で縦笛を吹いて面白かった」とか、まぁそんなものだ。たまたまその日は野良犬も入って来なかったし、A君も家庭の事情か何かでテンションが低かった。だから「今日は何もありませんでした」と書いたのだろう。そう思う。取り立てて日記に書くほどのことが無いのに、無理から感受性のアンテナを張れるほど大人でもなかったし、「今日は息をして、瞬きをしました」と書くほど困った子供でもなかった。「真っ赤に染まった西の空に向かって、渡り鳥の群が飛んで行きました。もうすぐ秋も終わりだなぁ、お父さんがそう言うので、何だか切ない気持ちになりました」こんな日記を書く小学2年生のほうが、よっぽど気味が悪い。

 めずらしく早起き、溜まっていた仕事と部屋を片づけて、レンタルで映画も見たけれど、「今日は何もありませんでした」そんな一日が好きで仕方ない。
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by ajicoba | 2006-01-23 20:07 | エッセイ
プラスとマイナス
 実家に立ち寄ると、母に『無洗米』を勧められた。米ヌカをキレイサッパリ取ってあるから、ヌカ特有の臭みが無くって美味しいらしい。その足でスーパーへ向い、無洗米を購入して帰宅。早速、使ってみる。味は普通に美味しいといった感じだったが、味より何より『研がなくてもいい』そのことに感心させられた。他の台所仕事はお湯で出来ても、米を研ぐのだけは冷水でないとどうにもならない。冬のこの時期には本当に助かる訳で、少々値は張るものの、すっかり愛用するようになった。

 スーパーの特売日、コシヒカリを格安で購入。すっかり浮かれていた。米櫃の中でコシヒカリと無洗米を混ぜてしまう。以来、無洗米を洗う毎日。
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by ajicoba | 2006-01-21 00:19 | エッセイ
大人として
 年甲斐もなく仮面ライダーシリーズが楽しみの一つだ。最近の仮面ライダーは大変なことになっている。現在放送中の『仮面ライダー響鬼(ヒビキ)』は妖怪を退治する『鬼』の物語。このヒビキは改造人間でもなければ、変身ベルトもない。主に車で移動するので、もはやライダーでもない。鬼である。詳しいストーリーは書かないが、子供には勿体ないくらい面白い。日曜朝8時のオンタイムで見たいのだが、いかんせん夜型人間である。平日でさえ10時以前には目を覚まさないのに、日曜だけ8時に起きるのも、やっぱりどうかと思う。よって見逃すことが多い。そこでDVDをレンタルしてまで見るのだから、大人として少々困ったものである。

 先日、最新巻がレンタルリリースになっていた。早速パッケージを手に取って裏面など読んでいると、横で声がした。「ヒビキないぃぃ〜」。見ると、若いお母さんに連れられた男の子が半ベソをかいている。「ビビギだいぃぃ〜」今にも半ベソが本ベソになりそうな男の子に「はい、どうぞ」と手に持っていたDVDを渡してあげた。どうやら最後の一本だったようだ。「そんな、お気遣いなく。○○ちゃん、今度にしなさいね。えっ? ほんとにいいんですか? すみませ〜ん。○○ちゃん、ほらっ、ありがとうは?」と恐縮するお母さんに「大人として当然ですッ」と言わんばかりの笑顔で応え、その場を立ち去った。

 
 少年よ、母さん美人で、良かったね   アジコバ
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by ajicoba | 2006-01-17 06:17 | エッセイ
順番を間違える
 順番を間違えてはいけない。順番を間違えると人は、ひどい目に遭う。例えばこんな風にだ。もよおしてトイレに向かう。トイレのドアを開け、中に入りドアを閉める。便座が下がっていることを横目で確認しつつ、ベルトを緩めズボンとパンツを下ろしホッと一安心となる。まぁこれが一連の順番、常だ。…が順番を間違える。トイレのドアを開け、中に入りドアを閉める。トイレットペーパーが切れていることに気づき補充する。「仕事帰りにでも買い足しとかないと」などと考えつつ、ベルトを緩めズボンとパンツを下ろし便器に腰をガーン!となる。冷たい便器にスッポリはまって、何が起こったのか全くわからず、手足をパタパタしている下半身丸出しの大人、もうすぐ30歳。こんなにひどい目もそうそうないだろう。

 人は順番に支配されている。いつも利用するレンタルビデオ店のアルバイトA君などは、典型である。マニュアル化されたA君にとって接客対応の順番は絶対なのだ。

「いらっしゃいませ」「会員証をお願いします」「会員証のほうお返しします」「レンタル日数のほうは?」「○○○円になります」「○○○円からお預かりします」「○○○円のお返しになります」「○月○日迄のレンタルになります」「ありがとうございました」(まったくもってひどい日本語が並んだものだが、ここでは触れずにおく)

 これが毎度のA君の接客だ。もちろん感情など小指の爪の先ほどもこもっていない声音である。これ以外の言葉を話す、いや、発音するA君を見たことがなかった。あまりに無感情な接客に少しカチンときたので、意地悪半分で実験を試みることにした。借りたいDVDを3本と会員証、レンタル料金ちょうどのお金を一緒にカウンターのA君に渡し、同時に「一週間でお願いします」と言ってみた。「会員…しょう…証…レンタ…ル…四百…ひゃく…五…十円…」A君は声にならない声でしばらく口をモゴモゴさせた後、レンタルの手順を済まし、商品を手渡しながらこう言った「のした」

 ひどい、全く意味がわからない。何てことだろう。順番を間違えた人はこんなにもひどい目に遭うのか。順番を間違えたA君はパニックになったのだ。パニックになった脳で何とか、必死の思いで紡ぎ出した言葉、それが「のした」だったのだ。がんばった、よくがんばった、ただ全く意味がわからない。

 順番を間違えてはいけない。順番を間違えると人は、ひどい目に遭う。
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by ajicoba | 2006-01-07 04:05 | エッセイ



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