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春の訪れ
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 京都から明石に引越して来て約一年半。ちょうど去年の今頃だったか、ご近所さんから醤油と砂糖の甘辛い煮物の匂いがやたらと漂ってくる。そう『カレイの煮付け』のあの匂い。それにしても、ご近所さんの献立が何処も彼処も『カレイの煮付け』ってことはないだろうと、よくよく考えてみると、それは『イカナゴの釘煮』を煮る匂いだとわかった。

 イカナゴを醤油とザラメ砂糖、水飴などで甘辛く佃煮にした『イカナゴの釘煮』は、兵庫県の播磨・明石、神戸・垂水、淡路島北部を中心とする地方の郷土料理。「神戸の西のほうの人は各家庭で釘煮を作る」ってことは知っていたし、食べさせてもらったこともあったけれど、自分が住むことなったこの街が、その最も盛んな地域だとは知らなかった。

 スーパーの鮮魚売り場にはイカナゴのパックが山積みになり、釘煮用の調味料もまた山積み。各家庭ごとに自慢のレシピがあるようで、醤油とザラメ砂糖の配分以外にも、生姜、山椒、鷹の爪、柑橘類を加えるなど、工夫に余念がない。その味を他地方の親類や知人に配ったり、発送したりと、この時期この街の奥様方は『イカナゴの釘煮』に躍起である。

 ちなみに、京都でよく食される『ちりめん山椒』のシラスは、カタクチイワシなどイワシ類の稚魚を指す。イカナゴもてっきり何かの稚魚の俗名だと思っていたら、イカナゴはイカナゴの稚魚でした。

 スーパーや市場にイカナゴが並び始め、釘煮を煮る甘辛い匂いが街に漂い出すと、この街の人たちは春を感じるとのこと。桜よりもひと足早い『春の訪れ』である。とは言え、僕は未だこの『春の訪れ』には馴染めていないのが正直なところだ。あと何年かすれば、釘煮の匂いで春を感じるられようになるだろうか? 思えば、桜が咲くよりもひと足早く『春の訪れ』を感じられるなんて、ひとつ多く得をしたような、ちょっと贅沢で素敵なことかも知れない。ご近所を歩きながら、鼻を上に向けクンクンとしてみる。釘煮の匂い。春はもうそこまで来ている。

 地震で被災された方々の元にも、少しでも早く春が訪れ、少しでも心が癒されますように。
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by ajicoba | 2011-03-24 17:21 | 食コト



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