言葉の壁
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 海外の航空会社の飛行機に乗ったとき、外国人のCAさんに「Would you like something to drink?」って聞かれると、大抵のときは「Coffee please.」って答えます。本当はコーヒーじゃなくて『アップルジュース』や『オレンジジュース』が飲みたい気持ちだってあるんだけど、決して頼むことはありません。だって『アッポォ~ル』や『オォ~レンジ』って言うのは、何だか妙にバカっぽくて、ものすごく恥ずかしいんだもの。隣の席に日本人が座っているときなんて特にダメです。何でもないような顔をしながらも、絶対に心の中で「こいつアッポォ~ルって言っちゃたよ」って思っているに違いありません。まして、その渾身の「アッポォ~ル」に「sorry?」なんて言われてしまった場合には、もう大惨事です。二度目の「アッポォ~ル」を繰り出す勇気なんて身体のどこにも残っていませんし、かと言ってそこで「Coffee please.」に切り替えても「こいつアッポォ~ルが通じないから、コーヒーにしちゃったよ」って思われてしまいます。ともすれば、その後の『Beef』『Chicken』『Fish』の発音にも悪い影響が出てくるし、どれだけ機内が寒くても、ブランケット無しで過ごすハメになりそうです。だから、いつも最初から無難にコーヒーを頼むようにしています。

 『Coffee』と『コーヒー』は結構かけ離れた発音なので、あまり抵抗がないのですが、英会話の例でよくある『バァナァナァ~』よろしく、日本語として親しまれた英単語、いわゆる日本語英語を発音するのって、どうしてこんなに恥ずかしいんでしょう? バイリンガルのタレントさんが日本語での会話中に、突然「マイコォ・ジャクスゥン」って言うのを聞いたときに、何だか妙にバカっぽくてインチキ臭い感じになるのと似ています。元来それがネイティブの正しい発音なのに、発音が良くなればなるほど、バカっぽくなって、しかもインチキ臭くなるなんて、日本語英語とは何とも恐ろしいものですね。英語を話すのには『リスニング』や『発音』『語彙力』ってのが、もちろん必要なんだけど、この日本語英語のバカっぽさ&インチキ臭さという壁を越える『勇気』も大いに必要だと思うのです。

 あるとき、機内でデザートにゼリーが配られた。隣の席に座っていた日本人のオジサンは、ちょうどそのとき眠っていたのでゼリーが配られなかったのだが、急に目を覚ますと、他の乗客がゼリーを食べているのに気付いた様子。慌ててCAさんを呼んで、「ジェリー、ジェリー、オォ~レンジジェリー」と言い出した。そんなことでCAさんを呼びつける勇気もすごいなと思ったけれど、『オォ~レンジジェリー』って躊躇なく言える勇気はもっとすごいと思った。ちなみに、僕たち他の乗客が食べていたのは『マンゴーゼリー』でした。
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# by ajicoba | 2011-08-12 19:15 | エッセイ
フィルムカメラと想像力
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 旅行に久しぶりにフィルムカメラを持って行こうと思って、CONTAX T2を引っ張り出してきました。カメラの詳細やスペックは詳しい人に任せるとして、今となっては、フィルムカメラのこの違和感って何だろう? もうすっかりデジタルカメラに慣れてしまって、その場で撮れた画の確認ができないのってこんなにも不安だったのかと…。でも本来、写真を撮るとはそういうことだったんですよね。

 一緒に仕事をしていたカメラマンさんが言っていました。良い写真を撮る秘訣は「撮れろ!」と念じてシャッターを切ることだと。笑い話に聞こえるかも知れませんが、これって一番大事なことなんです。カメラマンさんは写真を撮る前に、どんな写真を撮りたいかを想像して頭の中で完成させてから、その画を撮るために必要なレンズや機材を選び、セッティングして、シャッターを切ります。つまり最初に撮りたい画『欲しい画』が頭にあるから「撮れろ!」って言葉が出てくるんですよね。カメラはあくまでも、頭の中の画を撮るための道具。デジカメになったからって、欲しい画の想像もなく「良い画が撮れないかな~?」と何十枚、何百枚と考えなくシャッターを切っているようでは順番が逆。カメラが撮ってくれた画を見て喜んでいるだけで、そこには想像力も何もない。『欲しい画』という答えがないんだから、いつまでたっても完成もない。どんなにカメラの性能が良くなっても、それではカメラに使われているのと同じこと。『撮ってみないとわからない』『見てみないとわからない』では話しにならないと。

 このことって、カメラマンさんだけじゃなく、モノを創る人間にとっては根幹に関わる大切なこと。いまやコンピューター技術の発達で、あらゆる分野のことが自由に手軽に事前可視化できるようになっています。デジタルカメラをはじめ、僕が生業としているデザインのDTPなんてのも、その最も代表的なもののひとつ。建築にしても音楽にしても。最近では実写映画の撮影でも、事前にCGを使ってカメラアングルやカット割りを確認する方法もあるとか。今後も増々いろんな方面に普及していくことでしょう。でも、どれだけ技術が進んでも『やってみないとわからない』『見てみないとわからない』ではやっぱり話しになりません。技術はあくまでも、想像をより忠実に具現化したり、事前に他者と正確に共有するための道具であって、技術が人間の想像力を超えることはない。人間が完成を想像しない限り、機械は答えを出してはくれないんですよね。

 部屋に花を飾ろうと思ったら、まずはどんな花が良いかを想像しないと。答えもなく花屋を探し回ったって、気に入る花なんて見つかりません。それと同じこと。何をするにも『やってみないとわからない』『見てみないとわからない』なんて言われたら、ジョン・レノンだって天国で泣いちゃうだろうさ。

 ではでは、明日から1週間、カンボジアに行ってきますが、やっぱり不安なのでデジカメも持って行きます…。
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# by ajicoba | 2011-08-02 09:17 | エッセイ
大義名分
 世の中の給料日前って時期なんかに銀行に行くと、ATMには長蛇の列ができている。預金を引き出す僅か30秒ほどの為に30分くらい列ばないといけないこともあるけれど、待っているのは皆同じこと、仕方なしとして列んでいる。…が、皆が少なからずイライラしながら待っている先頭で、20件も30件も振込み操作をしている人って一体どんな図太い神経をしているんだろう?と思う。ATMの操作音が繰り返される度に、後ろに列んでいる人達のイライラが増して、中にはあからさまに咳払いや舌打ちをするオジサンなんかもいる中、延々と淡々と操作は続きます。

 きっと人間一個人なら、こんなに図太く無神経ではないはず…。もっと思慮深くて礼節を弁える。…そう信じている。当然、後ろの人達に迷惑をかけていることもわかるだろうし、申し訳ないとも思うだろう。何かがこの人の目と耳を塞いでいる。それはきっと『会社の仕事で仕方なくやっている』といったような、自分に責任はないという『大義名分』だと思う。他人から見れば、ただただ迷惑なだけで、何の『大義名分』にもならないことだけど、その人にとっては立派な責任逃れの『大義名分』なのだろう。

 大小併せて、世の中にはこんな責任逃れの『大義名分』が溢れていると思う。仕事の話だからって、電車内で平気で電話をしたり、接待に使うお店の店員さんに横柄な態度をとったり…。子連れだからって、満員のエレベーターに無理矢理ベビーカーを押し込んで来たり…。挙げればキリがないほど。モンスターペアレントなんてのもその部類か。また、自分を顧みても、人を待たせているからと少々乱暴な運転をしていたり、他にも思い当たり反省しなければならないことが多々ある。

 責任逃れの先が、自分ではない誰か、子供や家族、仕事、取引先やお客様、会社や組織、国や政治、果ては思想、宗教、正義や倫理なんて曖昧なものになって行けば行くほど、責任の所在も曖昧になって、個人の思慮や礼節は薄れていくように思う。戦争なんてその最たるもの。『自分の為ではなく、何かの為にやっている。だから自分は悪くない』っていう『大義名分』が人を醜くしてしまうのかも知れない。『大義名分』言葉としては良い響きだけれど、一度、人間一個人に立ち返って疑うことができたら、もう少し良い世の中になるんじゃないかな?…と思うのです。

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# by ajicoba | 2011-07-15 19:32 | エッセイ
新習慣
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 いつの頃からか、小用を座ってする男性が増えていると聞くようになった。家庭のトイレがほぼ洋式になったことと、なるだけトイレを汚さないようにって事情で増えてきたんだろうこの習慣、最近では座らないと小用ができない男性も多いらしい。

 男子たる者、どこでも立って用を足すのが当たり前の時代に育った身としては、なんだか情けないような気がして敬遠していたのだが、新居に引っ越したのを機に、嫁さんからの強い命令もあって、座ってするようになった。物心が付いて以来30年余、当たり前に立って小用をしていた身としては、毎度毎度パンツを下ろすのは、少なからず面倒だし、嫁さんにキバを抜かれたような威厳なさもあったけれど、いざ身に付いてみるとなかなか良いもの。今となっては立ってするほうが少々不安になる。世の男性達もこうやって躾けられていくんだな…。

 けれど、この新習慣も人様の家にお邪魔したときなどには、少々悩みの種となる。立って用を足して、トイレを僅かでも汚してしまうのは、もちろん大変申し訳ない。訪ねてきたオッサンにトイレを汚されるなんて、もっての他だろう。かと言って、わざわざ小用の為だけに、オッサンに便座に座られるってのも如何なものか…?。家の人にしてみたらどうなんだろう? 「トイレを借りたいんですけど、座ったほうが良いですか?立ったほうがいいですか?」なんて聞くのも妙な話しだし、まぁ、大抵の場合は、せめてものお詫びとばかりに座った後の便座をペーパーできれいに拭いて出て来るのだが…。その辺り、各家庭によってハッキリと方針を示して欲しいものです。『立ち小便禁止!』、もしくは『わざわざ座るな!』ってな張り紙でもしといてくれたら、気兼ねなくトイレを借りられるんですけど…。
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# by ajicoba | 2011-07-07 20:53 | エッセイ
ランタン
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 ハーマン・ニヤー社のフェアハンドランタン。カラーバリエーションも多く、白が良いかな? 赤が良いかな? と思案しながら、出かけた方々で探していたところ、とあるお店で見つけたトリコロール。カラーリングが「御フランス」って言うよりも、何だか昔の超合金っぽくて、そこがとってもかわいい奴です。そういえばガンダムもトリコロールでしたね…。

 100年以上変わらない超ローテクなシンプル構造で、布製の芯に染み込んだ油を燃やす、要はオイルランプです。明るさではマントル式のガソリンランタンやガスランタンには遠く及びませんが、燃焼音が全くしないのでキャンプの夜を静かに過ごすのにはもってこい。静かにゆらゆら揺れる灯を見ていると、身体の芯から落ち着きます。キャンプでの夕食後は、明るいランタンは全て消して、虫の声でも聴きながら眠気に身を任せるのも良いもんです。
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# by ajicoba | 2011-05-20 21:32 | モノコト
ビーチコーミング
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 この連休に訪れた、高知県土佐湾のとある砂浜で見つけたモノ。磁器製でニワトリの形。目や羽根、クチバシなど手描きの彩色が施してあって、目と尾っぽ、お腹の辺りに合わせて5つの穴が空いています。厚さは7mmほど、裏側も同じように彩色がしてあります。

 穴が空いているってことは、糸か紐を通して使う道具で、漁具か釣具の類いか? 磁器製で手描きの彩色ってことは、結構古いモノでは? 何より、わざわざニワトリの形にしてあるのは何故? 何かしらの意味があったり、縁起を担いでのこと?

 いろいろと憶測をしながら、ネットなどで調べてみても、全く何なのかわかりません…。どなたか、わかる方はいらっしゃいませんでしょうか?
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# by ajicoba | 2011-05-13 18:32 | 日記
春の訪れ
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 京都から明石に引越して来て約一年半。ちょうど去年の今頃だったか、ご近所さんから醤油と砂糖の甘辛い煮物の匂いがやたらと漂ってくる。そう『カレイの煮付け』のあの匂い。それにしても、ご近所さんの献立が何処も彼処も『カレイの煮付け』ってことはないだろうと、よくよく考えてみると、それは『イカナゴの釘煮』を煮る匂いだとわかった。

 イカナゴを醤油とザラメ砂糖、水飴などで甘辛く佃煮にした『イカナゴの釘煮』は、兵庫県の播磨・明石、神戸・垂水、淡路島北部を中心とする地方の郷土料理。「神戸の西のほうの人は各家庭で釘煮を作る」ってことは知っていたし、食べさせてもらったこともあったけれど、自分が住むことなったこの街が、その最も盛んな地域だとは知らなかった。

 スーパーの鮮魚売り場にはイカナゴのパックが山積みになり、釘煮用の調味料もまた山積み。各家庭ごとに自慢のレシピがあるようで、醤油とザラメ砂糖の配分以外にも、生姜、山椒、鷹の爪、柑橘類を加えるなど、工夫に余念がない。その味を他地方の親類や知人に配ったり、発送したりと、この時期この街の奥様方は『イカナゴの釘煮』に躍起である。

 ちなみに、京都でよく食される『ちりめん山椒』のシラスは、カタクチイワシなどイワシ類の稚魚を指す。イカナゴもてっきり何かの稚魚の俗名だと思っていたら、イカナゴはイカナゴの稚魚でした。

 スーパーや市場にイカナゴが並び始め、釘煮を煮る甘辛い匂いが街に漂い出すと、この街の人たちは春を感じるとのこと。桜よりもひと足早い『春の訪れ』である。とは言え、僕は未だこの『春の訪れ』には馴染めていないのが正直なところだ。あと何年かすれば、釘煮の匂いで春を感じるられようになるだろうか? 思えば、桜が咲くよりもひと足早く『春の訪れ』を感じられるなんて、ひとつ多く得をしたような、ちょっと贅沢で素敵なことかも知れない。ご近所を歩きながら、鼻を上に向けクンクンとしてみる。釘煮の匂い。春はもうそこまで来ている。

 地震で被災された方々の元にも、少しでも早く春が訪れ、少しでも心が癒されますように。
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# by ajicoba | 2011-03-24 17:21 | 食コト



アジコバの考える毎日
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