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フィルムカメラと想像力
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 旅行に久しぶりにフィルムカメラを持って行こうと思って、CONTAX T2を引っ張り出してきました。カメラの詳細やスペックは詳しい人に任せるとして、今となっては、フィルムカメラのこの違和感って何だろう? もうすっかりデジタルカメラに慣れてしまって、その場で撮れた画の確認ができないのってこんなにも不安だったのかと…。でも本来、写真を撮るとはそういうことだったんですよね。

 一緒に仕事をしていたカメラマンさんが言っていました。良い写真を撮る秘訣は「撮れろ!」と念じてシャッターを切ることだと。笑い話に聞こえるかも知れませんが、これって一番大事なことなんです。カメラマンさんは写真を撮る前に、どんな写真を撮りたいかを想像して頭の中で完成させてから、その画を撮るために必要なレンズや機材を選び、セッティングして、シャッターを切ります。つまり最初に撮りたい画『欲しい画』が頭にあるから「撮れろ!」って言葉が出てくるんですよね。カメラはあくまでも、頭の中の画を撮るための道具。デジカメになったからって、欲しい画の想像もなく「良い画が撮れないかな~?」と何十枚、何百枚と考えなくシャッターを切っているようでは順番が逆。カメラが撮ってくれた画を見て喜んでいるだけで、そこには想像力も何もない。『欲しい画』という答えがないんだから、いつまでたっても完成もない。どんなにカメラの性能が良くなっても、それではカメラに使われているのと同じこと。『撮ってみないとわからない』『見てみないとわからない』では話しにならないと。

 このことって、カメラマンさんだけじゃなく、モノを創る人間にとっては根幹に関わる大切なこと。いまやコンピューター技術の発達で、あらゆる分野のことが自由に手軽に事前可視化できるようになっています。デジタルカメラをはじめ、僕が生業としているデザインのDTPなんてのも、その最も代表的なもののひとつ。建築にしても音楽にしても。最近では実写映画の撮影でも、事前にCGを使ってカメラアングルやカット割りを確認する方法もあるとか。今後も増々いろんな方面に普及していくことでしょう。でも、どれだけ技術が進んでも『やってみないとわからない』『見てみないとわからない』ではやっぱり話しになりません。技術はあくまでも、想像をより忠実に具現化したり、事前に他者と正確に共有するための道具であって、技術が人間の想像力を超えることはない。人間が完成を想像しない限り、機械は答えを出してはくれないんですよね。

 部屋に花を飾ろうと思ったら、まずはどんな花が良いかを想像しないと。答えもなく花屋を探し回ったって、気に入る花なんて見つかりません。それと同じこと。何をするにも『やってみないとわからない』『見てみないとわからない』なんて言われたら、ジョン・レノンだって天国で泣いちゃうだろうさ。

 ではでは、明日から1週間、カンボジアに行ってきますが、やっぱり不安なのでデジカメも持って行きます…。
by ajicoba | 2011-08-02 09:17 | エッセイ
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