ケータイが…鳴らない。着信も無ければ、メールも来ない。もともと友人、知人が多いほうではない上、このところ日々の忙しさに、数少ない人付き合いをサボっていたツケが、こんなところで廻ってきたのだろうか。
でもまぁ、もともと野郎同士の付き合いなんてこんなもの。用事があるとき、用事の分だけ連絡を取り合って、思い出したように「生きてるか?」などと問うてみたりする。付かず離れず、それで充分である。…と、女友達の存在など無かったことにして強がってみても、家に丸一日置き忘れたケータイが、暗い部屋の中でピコピコ光っていないのには、さすがにグゥとなる。 携帯していようが、家に置いていようが、鳴らないものは鳴らない。携帯していても電話が鳴らないのだから、一体何を携帯しているのか判ったもんじゃない。なまじっか『電話』なんて言ってしまうから、余計な期待をしてしまうわけで、いっそのこと『非常用遠距離会話器』とか何とか名前を付けてくれたほうが、よっぽど気持ちの収まりが良いし、『頼れるアイテム』って感じがして好きだ。 そもそも『ケータイ』ってどうだろうか?『携帯灰皿』だって『携帯ヒゲ剃り』だって、随分前から『携帯』である。それを自分だけが『携帯です』みたいな面をして。もはや『電話』ですらなく『ケータイ』って物になっているのも、全く気にくわない。携帯できるから『ケータイ』だったら、『携帯トイレ』だって『携帯ロケットランチャー』だって立派な『ケータイ』だ。うっかり街なかで「ケータイ貸して」なんて言えやしない。 あまりにケータイが鳴らないときは『117』をダイヤルしてみる。唯一の希望『利用停止』の確認だ。「117」「プップップッ・・・」「ゴゴ、ハチジ、ニジュウ、キュウフン、ヨンジュウビョウ、ヲ、オシラセシマス」。アナウンスのお姉さんは、毎度いちいち元気が良く「ごめん、ごめん、うっかり入金忘れてて…」なんて、誰へともなく言い訳を考えていたのが虚しい。ごまかして「お〜、もうそんな時間か〜」などと、ひとり呟いてみたところで、時間が知りたいのなら、最初からケータイを見れば良いわけで…。 発信履歴を見る。『117』『117』『117』… 『リカちゃん電話』って何番だったっけな?
by ajicoba
| 2006-07-05 06:15
| エッセイ
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